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2006年4月26日 (水)

「国家の品格」に品格はあるんか?

前日書きかけた「国家の品格」についてです。ちなみに1月に一度読んだだけでのうろ覚えです。昨日までは「臓器農場(帚木蓮生)」を読んでたんですが、ちょっと重いんで。

読み当りの良い本ですね。新書独特の軽さっていうのか、講演起しというのも納得できる文体。でも、この読み当りの良さっていうのが私には気に食わない。要は日本人の特殊性を言い募った「日本異質論」との表裏一体さを感じるんですね。それは今アメリカ人が「いやあほかの国のことは知らんけどアメリカが一番だよ」といって悦に入り、世界の警察を実行していることと本質的にはあんまり変わらないと思うんです。「情緒を重んじろ」というのは、あくまで自己の中にあることを肯定しろ、ということ言い換えうることだと思います。その点では、「俺は正しいが他はバカばっか」という俺様野朗とあんまり変わりはなくなってしまう。その点は本人も「私はそう思っている」と認めていますが、認めりゃいいってもんじゃない。この言い草、どこかで聞いたな。あ、小泉の発言に近いや。

あと、かなり偏った事例を基にした内容が鼻につきますなあ。以下気づいた点について。

=突っ込みその1=                                         この本の中で、ゲーテルの不完全性定理の話が出てましたが、要は「全てのことが論理的には証明されない」ということを言いたいのであれば、そんなに小難しいことを引き合いに出さなくてもいいんじゃないでしょうか?というか、私はゲーテルの定理なんていうのは、それこそ新書の解説を読みましたが、自己言及への矛盾についてのちょっとした説明(うそつきのパラドックスでしたっけ?)以外はさっぱりわかりません。何かこの内容自体が理屈っぽく思えるのは気のせいでしょうか? もしかすると「俺は数学者だよん」と言いたいがための引用だったかもしれません。                              =突っ込みその2=                                           何か「海外のエリートは日本の文学についてよく知っていて突っ込んだ質問をする。そういうことに答えられない日本人は駄目」なんて話がありましたが、そりゃ限られた人ですよ。あと、「三島の自殺と夏目の小説での主人公の自殺の違いは?」なんていきなり尋ねてくる人ってのに品格がありますかね?確かに時事関係は良く聞かれますし、そういう知識は出来る限り蓄積する必要はありますが。                             =突っ込みその3=                                          インドではみんなえらく計算が速く正しい、と思われているみたいですが、何人のインド人にあったんでしょうねえ。少なくとも私は、数も数えられないインド人が大勢いるという話を複数で聞いたことがあります。大体10億を超える人がいて、日本とは比べ物にならない貧富の差があるんですから、かなりの数の優秀な人材もかなりの数の不十分な教育水準の人も普通に居るってことが分からないかなあ、この数学者は? ちなみにこの言では、「中国人はみんな商売上手」「イラン人はみんな商売上手」「日本人はみんな商売が下手」などなど枚挙に暇はありません。  

いや、いいことを言っているところもありますよ。例えば「英語なんかやらせる時間があるんなら国語をしっかり勉強させるべき」とか、「子供に駄目なものは駄目、と教えるべき」などの教育論については、納得します。

思うんですがこの筆者、実は会って話すと普通のおっさんで、ちょっとべらべらっと喋った講演が本になっちゃって、ということかもしれません。これはあくまでも私の感覚です。

とはいえ、

「愛国心は悪人の最後の逃げ場」という言葉がありますが、心地よい理屈であるが故に変な対象否定からの自己肯定には逃げ込まないようにしなきゃいかんですな。                                                    

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コメント

帚木さんですか!今読んでらっしゃるのとちょっと近いですが「エンブリオ」も楽しいですよ。結構この方の好きで今日も「国胴」買ってきたところでした。ww
「国家の・・」の突っ込み、笑いました~。
教えていただいた「幻の・・」と「空白の・・」面白かったです。ありがとうございました~!!

投稿: あすらん | 2006年4月26日 (水) 18時42分

あすらんさん、

いや、教えた本を読んでもらってありがとうです。帚木さんの臓器農場、なかなかおどろおどろしくて○○な人は読まないほうが(ネタばれ配慮です)。

投稿: ドイツ特派員 | 2006年4月30日 (日) 00時31分

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