« 黒武洋「そして粛清の扉を」 | トップページ | 「Voice Mail(John Wetton)」 »

2007年3月21日 (水)

高坂正尭「世界地図の中で考える」

先日偶然立ち寄ったブックオフで買ったのがこの本です。新潮選書からのもので今は絶版の様です。

高坂正尭氏は、保守論客として15年くらい前にかなり活躍されていましたが、非常に残念なことに既に亡くなられています。決して全てにおいて賛成する意見をお持ちの方ではありませんでしたが、今の方には無い飄々とした少し笑いの要素もある方でした。これはもしかすると京都大学という文化にあるのかもしれません。京都学派の一人である梅棹忠夫氏なども同じような味わいがあると思っています。

この本の出版は昭和43年、40年ほど前の本ですが、そこで語られている本質は今でも通用するものが多いと思います。特にアメリカの孤立主義とその世界拡大行動に至る過程、また彼らの誤解からのベトナムの泥沼など、今のイラク政策に見事に重なるようです。

実際に感じることなのですが、実は超大国アメリカに壮大な戦略など無いのではないか、と思い始めています。中東政策などはその典型でしょうが、結構「いいことみたいだし、とりあえずやってみるか」という政策が多いんじゃないか。ところが、その後は(この本でも述べられているのですが)物量でねじ伏せて何とか体裁を整える、ということなのかな?と。この当時のベトナム戦争でも、その戦争の性格・状況を分析している節は無いですし、「ええい、やっちまえ!」ってな雰囲気を感じてしまいます。

このこととは別に、ある年月を経てからその内容が耐えうるものかどうか、検証するのは重要だということですね。一番酷いのは経済評論家と言われる人たちですが、まあ当たらない当たらない。それも、当たらない可能性を論じていればまだしも、「絶対こうなる」と言っておいて外れるから羞恥プレー度満点。

また少し古い本でも読んでみますか(ってそうするかどうかは不明)。

|

« 黒武洋「そして粛清の扉を」 | トップページ | 「Voice Mail(John Wetton)」 »

コメント

偶然ですが、「高坂正尭外交評論集」(1996年刊行)を本棚でつけて読み返してます。

切れ味は鋭い。特に現在のアメリカと中国の関係をキチンと予言しているのには感心する。

既に外交史となっているものも多いので、評論時に現在進行であっても、結果が分かっているので、勉強になります。

「実は超大国アメリカに壮大な戦略など無いのではないか」という貴殿の感想は正しいと思います。アメリカの政治を追っかけると、結局は行き当たりばったりです。日本では想像出来ない様な軍事力があるので、ちょっと動くと世界が(というか日本)過剰反応して、ありもしない裏を勘繰る事になります。

なぜ、世界はロックフェラーとロスチャイルドの戦いみたいな話になるのか不思議でたまりません。

また、日本では直ぐ、アメリカがこうしろああしろみたいな話が出てきますが、アメリカは喋れません。登場人物のいない物語は外交でも歴史でもあり得ないのに、不思議とアメリカだけは特別扱いの様です。

投稿: ysjournal | 2010年7月29日 (木) 23時03分

ysjournalさん、

「戦略的国家」などというのは実は存在しないんじゃないか?というのが最近私が考えていることなんですね。もしアメリカが長期戦略を考えているんであれば、90年代前半までの経済停滞も戦略としての過程だったのか?ということになります。そんなバカな話はないわけで、せいぜい5年程度を見越せば良い方ではないか、と。

その無定見さにおいて、今の日本はそれはそれまた酷い状況だと思いますが、それとても我々国民の水準なのだと思うしかないわけです。

投稿: ドイツ特派員 | 2010年7月30日 (金) 14時48分

「高坂正堯外交評論集 書評」でググったら、このエントリーの自分のコメントと言う結果が、9番目に出て来て笑ってしまいました。

この時の結論とは、ちょっと違って来ているのですが、アメリカではきちんとした壮大な外交戦略を持った人が、時々、登場するという事ではないかと思ってきました。結局、連続的ではないので、全体としては、戦略無しと同じ事ですが。

取り敢えず、フォローアップと TB のお知らせまで。

投稿: ysjournal | 2011年9月 7日 (水) 09時45分

ysさん、

何だか笑ってしまいますね、その順番には。

しかしこういう大きな絵を書く人というのは、やはり突然変異なんでしょうか?日本では例えば手塚治虫が一番見通していたんじゃないか、という話もありますが。

連絡有難う御座います。

投稿: ドイツ特派員 | 2011年9月11日 (日) 22時58分

このブログの影響力を調べる為に(?)、今日もう一度ググってみたら、堂々の一番になってました。

素晴らしい。

投稿: ysjournal | 2011年9月14日 (水) 21時06分

ysさん、

それはさすがにまずいでしょう?Googleに削除依頼出そうかと思います(笑)。

投稿: ドイツ特派員 | 2011年9月17日 (土) 10時36分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104193/14344554

この記事へのトラックバック一覧です: 高坂正尭「世界地図の中で考える」:

« 黒武洋「そして粛清の扉を」 | トップページ | 「Voice Mail(John Wetton)」 »