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2010年3月30日 (火)

何故か船戸与一に惹かれる

今回の出張でも読んでいました、船戸与一。長時間のフライトでは必ず一冊は入っている船戸与一、何で好きなんだろう?

福田和也に言わせると、「評価不能な作家」(「作家の値うち」だったかな?)である船戸与一ですが、私に言わせれば「その評価が理解不能」でしかない。ま、評論家の話などはどうでも良いんで自分が良いと思えばそれで構わないわけですが。

彼の小説に出るのは、大体にしてドロップアウトした人だったり、逃げられない抑圧の人だったりするわけです。カッコイイところは正直殆どないし、例えば司馬遼太郎や塩野七生辺りとは全然違う。だから舞台も何かうらぶれたところばかりで、正直気が滅入るような光景が広がりますね。暴力が渦巻いているし、最後は殆ど皆が死んでしまう展開。で、美文家でも無いでしょうし、ミステリーのような驚く展開があるわけでもない。あるのは裏切りだったり抗争だったりです。

それでも、いやそれだからこそ惹かれるのは、徹底して弱者の構造から書いているからなんだと思っています。弱者が更に弱者を持つ二重構造であったり、それを利用する強者だったり。弱者が生き残るために一切の奇麗事が排除されなければならない状況でどうなるのか?という問いかけがあるんですね。アルカイダを非難するのは簡単だが、そこに至るアメリカはどうだったのか?貧困の憎悪がどれほど深いのか?単純な善悪論で語れない部分をずりっと抉り出しますな。テロは悪である、ならばそれは被害を受けた側は無罪なのか?何故テロに走るのか?彼らはではどうすれば良かったのか?それほどに複雑なのではないか?

その中で副次的ではありますが、彼の書く地域の事が良く分かるというのも魅力かも知れません。私が愛読しているのは「砂のクロニクル」ですが、下手な授業を受けるよりもこの本を読んだ方がイラン辺りのことは良く分かるんじゃないか?「かくも短き眠り」で書かれるルーマニアであったり、「金門島流離譚」での中台の事であったり…。

一つ異色な作品は「蟹食い虫フーガ」かな?ちょっとした笑いがあるのはこの本くらいか、と思います。ただ、やはり「猛き箱船」「蝦夷地別件」などの長編が迫力あるな、と思います。まあ「砂のクロニクル」でもちょっと「あ、ここはおっさん甘さが出たな」と思うところはあるんですがね。

今年は全冊読破挑戦するかな?

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コメント

>最後は殆ど皆が死んでしまう展開。

あ~っ?!

ま、まさか・・・、ドイツさん・・・。
それは、もしかして、今私が挑戦している、あの本の・・・○○バレ・・・??

。。。。゛(ノ・o・)ノ

違いますよね?
ね?

投稿: トネリコ | 2010年3月31日 (水) 00時27分

トネリコさん、

ご安心下さい、みんな死のうが死ぬまいが、あの本のネタとは関係ないです。死ぬのもあれば死なないのもありますし…。上に触れている内容も肝じゃないのでご安心下さい。

投稿: ドイツ特派員 | 2010年3月31日 (水) 07時34分

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