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2010年5月 7日 (金)

サソリ最後の一撃:「Sting in the tail」(Scorpions)

自分が還暦を迎えたときに、どうなるかが想像できますか?

Scorps
前列の人と、左から二人目の人は還暦越えたおじいちゃんです。

何かヤクでもやってるのか?

既に発表されたScorpionsの「活動終了」、それに合わせてラストアルバムになる「Sting in the Tail/蠍団とどめの一撃」でございます。


毎度ではあるが、ジャケットは何とかならんかな?

私くらいの中年後期になると、彼らの歴史を大きく分けるウルリッヒロート脱退前後をどちらもリアルに知っているわけですが、もう少し下の世代だと「World wide live」、もうちょっと下だと大ヒット曲である「Wind of change」というのがリアル体験なんでしょうね。その後はそれほど日本で大きく扱われる事はなく、それでも本国ドイツでは一定の人気を保ってコンスタントにアルバムを出していたわけです。で、さらに「Eye II Eye」という何を考えてるのか分からないエレクトリックポップアルバムでファンを奈落の底に叩き落してくれたわけですが、その後は「Unbreakable」から私も好きな「Humanity Hour: I」(当時の記事はこれ)で完全復活!と思っていましたから、今回のラストアルバムは否が応でも期待するわけです。

もうね、期待通りっすよ。

一曲目から歌詞が「I was born in a Hurricane」ですよそこの保母さん。ルドルフの切れ味抜群の職人サイドギター、少し鼻に掛かったクラウスのハイトーン、勢い余った感じて突っ込むマティアスのリード、「おらおら」系のリズム隊、もういつも通りなんですが、この高品質はなんなんだろう。これが引退表明したバンドの音かあ??後期スコーピオンズの良い所を少しマイルドな味付けにしているということで、私の印象としては、「Love at the first sting」+「Savage amusement」かな?ちなみに一曲目のギターソロ最後、にやりとできるのは同志です。

ウルリッヒ(Scorpionsで語る場合は「ウリ」ではない)在籍時には、「ノリの良い曲さえ彼が弾くと暗くなる」とまで言われた欧州の暗さが特徴でしたが、過渡期アルバムである「Lovedrive」以降は、本当に少し抜けた感じのハードロックになって行ったScorpions。で、彼らの魅力って何なのかな?と思うと結構答えに窮するんですね。特に彼らの代表曲って、私的には今一歩だったりするというこの暴言。例えば大ヒットした「Wind of Change」にしても、曲自体は別にたいしたことはない。「Rock you like a hurricane」「Blackout」「No pain, no Gain」もそう。ライブの定番になっている「The zoo」に至っては、正直凡曲だと思っています(をい!)。寧ろ、「Hit between the eyes」「Under the same sun」「Passion rules the game」「Make it real」なんかの方がずっといい。

で、ここで少し気付いたのは、彼らの曲って「サビが歌いやすい」ということ。凄く平易な英語で意味も取りやすい。だからライブでは映えるんですね。あとは曲全体の色を決めているルドルフのカミソリカッティングと、もうウマウマのクラウスのヴォーカル。で、この二人は既に還暦越えている、と。

確かにクラウスのヒステリックなまでの高音というのはなくなっていますが、それでも凡百のヴォーカリストが叶うわけもない凄い声。しかもさっき「Love at the first sting」と聞き比べたんですが、声の透明さは今のほうが良いという驚愕の事実。恐らく自己節制の賜物でもありますが、こうなるともう才能の差としか言えない。

前回の「Humanity Hour1」から、更にロック色の強い曲が増えて溌剌さが増しています。特に好きなのは「Rock Zone」や「No Limit」。バラードが昔に比べて多いんですが、甘ったるいものにはなっていない。で、最後に「The best is yet to come」って…。今のマリノス監督である木村和司が引退の時、「もっとサッカーが上手くなりたい」と言いましたが、彼らも「まだベストは来てないぜ」ということなのか…。

引退を選んだのはクラウスとルドルフの年齢だそうですが、それは創作意欲ではなく、ライヴを意識したんでしょう。彼らは「60を越えたにしては凄い」という言葉を聞きたくなかったんだと思います。その作品が高品質かどうか、それを続けられるのかどうか、ファンの期待を満足させられるかどうか…。年齢なんて何の言い訳にもならないのをよく知っているはずです。

早く来日して欲しいような、引退が早まる来日は後でもいいような、何とも言えない気分で聴き続けたいと思います。


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