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2010年10月10日 (日)

謀略的な外交というのはどの程度存在するのか?

少し以前ほどのとんがった状態から落ち着いてきた日中の問題ですが、実は私がTwitterでこんなことをつぶやいていました。

今日、いくつかの漁船船長釈放に対する記事を英語で読んだ。確かに「日本が中国の圧力に屈した」という記事が目立つのだが、逆に言えば、「中国は圧力を掛ける国家だ」ということも喧伝していることにならないか?それは中国もあまり歓迎することではないだろうし、アメリカを刺激したくないはず。(9月28日)

この時、色々と陰謀説・戦略説が言われていた時期だと思います。が、どうしてもそれが私には理解できなかったんですね。

例えば私がテレビで見た中に、

「中国は今回の事件で、『領土問題を無し』としている日本に対し、『いや、領土問題は存在しているのだ』ということを国際社会に認知させ、国際司法裁判所で争うのが目的であり、そのための戦略としての行動だ」

という意見を言う人がいました(独立総合研究所の青山繁晴氏)。また、謀略大好きな田中宇氏は、

「(今回の日中対立に関して)米国が日本を中国との敵対に誘導しているのではないかというものだ。3月末の天安艦沈没事件を機に韓国と組んで北朝鮮との緊張を高め、北の守護者になっている中国を怒らせ、ベトナムに肩入れして南沙群島問題で中越対立を扇動しているのと同様の流れである。米国は、韓国、ベトナム、そして日本をけしかけて、中国包囲網を構築している」

という意見を出しています。

こういう話を聞くたびに、私は「風が吹けば桶屋が儲かる」話を思い出します。確か、「風が吹く→埃が舞う→埃で目が見えなくなる人が増える→目の見えない三味線弾きが増える→三味線を作るために猫を取る→猫が減るためねずみが増える→ねずみが桶を噛むので桶が駄目になる→桶屋が儲かる」という話。でも、これを信じる人はいないですよね。風で目が見えない人が出る馬鹿馬鹿しさが仮にあったとして、目の見えない人がみんな按摩士になったらどうするのか?ところが、国際政治の謀略説っていうのは、この水準だったりすることが多いんですなあ。

例えば青山氏の「国際司法裁判所に持ち込みたい」という話、負けたら中国はどうするんですかね?それこそ元も子もない。元々鄧小平は、「後世が上手く立ち回るように」という遺言を残していたらしいんですが、Economistなどは、「その子孫が忠告を無視した」という記事を書いています。実際にこの問題が大きくなったところで、中国が大国になったところで(むしろそうなったらそれだけ)不利であろうことは想像に難くない。だって元々はアメリカが沖縄支配のころに実効支配していたわけですからね。田中氏の話も何となくその辺での飲み屋の会話ではないかな?と思う。日本をけしかけて包囲網ってあんた、結局それはアメリカが負担をすることになるわけじゃないですか?

大体冷静に考えて、「みんなが理解できる、腑に落ちる謀略」なんていうのは言葉が矛盾しているわけですよ。本当に怖い謀略があるとすれば、誰にも分からない形で静かに笑顔で浸透してくるものであるはず。それがひょこっと出てくることはあっても、気がついたらそうなっていた、というものであるはずなんです。

じゃあ今回のことって何なのよ?ということですが、物凄く素人が恐れ多くも言ってしまえば、「自国の条件反射で出てきた行動」だと思いますよ。中国が今回のような強硬な姿勢をとっても何も得にはならないわけで、インド・ベトナム・将来のアメリカを考えても行動の意味が分からない。だから実は深くは考えていなくて、「ふざけんな!」というところが出てきてしまって、あとから批判を浴びて「うわ、まずいなあ」というのが本当じゃないですかね?日本も同じで、「入ってきて逮捕だ」とかやっちゃって、中国に言われた上にフジタの社員を人質に取られて「うわ、まずいなあ」といって釈放した、と。アメリカはオバマが支持率落ちてこれ以上海外での軍事行動増加なんぞは受けられなくて、「とにかく日本は釈放してくれよ」という雰囲気。で、「釈放は歓迎」とか言ったのはいいけど、元々強権的な対外政策しかない国だから、そんな日本に対してマスコミなんかは批判をした、と。

中国で言えば、ノーベル平和賞に関してノルウェー大使を呼び出した、というのがありますが、これだって何も戦略などなく、「くそ、ノルウェーが出してるのかノーベル賞、ふざけやがって」というだけだと思います。何だかなあ、韓国寄りの審判に激怒したイタリア人が韓国大使に文句言っているみたいだな(分かる人には分かるが分からん人には分からん)。

で、更に思うんですが、結局国家の戦略なり作戦というのは、「起きてしまった偶発をどれだけ有利な必然に転換するか」だと思うんですよ。今回だと、レアアース問題が出てきてえらいこっちゃ、と。そうすると、レアアースを別に手当てするのか、それはどこにあって何故今まで手を出していなかったのか?開発をしていない、という事実だけでなく、そこに手を出していなかったのが技術的な問題なのか政治的関係なのか、そういうところを掘り起こして次の行動で有利にする、ということだと思うんですよ。

今回でいえばもしかすると中国は試合で勝って勝負で負けることもありうるわけです。ただ、それが日本が試合に負けて勝負に勝つことの裏返しではないわけですから、やはり本質的な部分をしっかり掘り下げながら次の手を考えるべきだと思いますね。まあ、とにか平和に行きたいだけなんですけどね。

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コメント

「中国は試合で勝って勝負で負けることもありうる」
なるほどなぁ~。

いつも面白くためになるブログを有難うございます。
ドイツさんの文章に触発されて、私も今日の日記に戯言(ざれごと)みたいなものを書いてみたので、良かったらご覧になってください。

投稿: トネリコ | 2010年10月11日 (月) 01時28分

トネリコさん、

いや、素朴な疑問なんですよ。どうしも理解できないんで。まあ話1/10で聴いてください。

読みに行かせて貰います、日記。

投稿: ドイツ特派員 | 2010年10月11日 (月) 07時42分

ドイツ特派員さん
この問題太平洋の反対側の陸の奥深くから眺めているのですが、よく分からない。歴史も含めて詳しく書いてあればある程、読んでる方は意味不明になる感じです。

レアアースの件が出た日には、完全に理解不能です。

という訳で、「自国の条件反射で出てきた行動」説を支持します。これらの偶然をどのように利用して行くのかが、戦略的行動だと思います。

気になるのは、これらの偶発的な出来事が起こる事の背景です。日本は少しづつ右傾化している様な気がしますし、中国は経済の発展で何とか押さえてきていた国内の問題の圧力が高まって外に強く出ているという気がします。

中国へ良く行かれている様ですが、雰囲気は如何ですか?

現在の勤め先(純米系)も細々と中国オペーレーションがあり、来年から絡みそうなので、中国の更なる経済発展と持続性にずっと疑問をもっているものとしては気になる所です。

投稿: ysjournal | 2010年10月11日 (月) 21時24分

ysjournalさん、

そう、何か良く分からないというのが基本なんですね。みんな分かったような話をするんですけれど、やはりそんなに皆先の先まで考えているとは思えないんです。もう少し言えば、中国は「どう反応すべきかまだ十分分かっていない」のではないか、と思います。だから今回のノーベル賞にしても、ノルウェー大使館の人間を呼ぶような変な対応を取っているんではないのでしょうか。

ただ、日本が起こったことを上手く処理する能力があるとも思えないので、次のActionは更に問題をややこしくする可能性があります。

背景については、仰ることがあるかどうかはまだ良く分かりません。ただ、中国内にも相当な矛盾が存在しているのは事実なようです。この辺はもう少しまとめてみたいと思います。

中国には仕事でしか行かないので、特に市井の人の庶民感覚が分かるわけではないです。ただ、仕事を普通にしている人は、特に共産党がとかイデオロギーを意識していないんじゃないか、と思います。会社の工場が蘇州にあって、そこの連中に「日本人の俺に言うのは難しいと思うけどさ、やっぱり日本人って嫌い?」と直接聞いたんですが、きょとんとしていました。「言ってる意味が分からない」という感じ。同じ質問を韓国人にすると、色々なことを話すんですが。少し気をつけて感じてきたいと思います。

投稿: ドイツ特派員 | 2010年10月12日 (火) 20時38分

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