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2011年2月 7日 (月)

「行きたかった」は駄目なんだ…/Gary Moore死去

今朝起きてFacebookを見ていたらこの記事に当たり、余りの事で言葉が出ませんでした。

ロックギタリストGary Moore死去

ここからは、単に書かずに居られないだけの物凄く乱れた文章だと思います。申し訳ないですが、でも何か言わずに居られないんです。

今を遡ること30年ほど前でしょうか、当時のミュージックライフに、「日本でまだ見ぬ凄腕ギタリスト達」といった特集がありました。で、そこに豹柄のジャケットにサングラスを掛けて、レスポールジュニアを持った人相の悪いギタリストの写真がありました。それが正に当時Thin Lizzyに居た頃のGaryでした。丁度その頃は、ブリティッシュロックからハードロックを聞き始める頃で、多分一番最初に聞いたのは「Back on the Street」だったかな、と思います。当時の記憶がはっきりしないんですが、もしかするとCozy Powellの「Tilt」だったかもしれない。

もうぶっ飛びました。

私はVan Halenをその時リアルで通っていなかったんで、6連符の早弾きというのはGaryが初めてだったんです(彼が良くやる短三度のシドミソミド~って奴)。当時はZepを聞いていたんですが、ギターでいえば正に異次元。当時は音がどうとかは全然気にしていなかったんですが、確かヤングギターに「Sunset」の楽譜があって、それをコピーしたのが初めてでした。早弾きなんかは出来ないわけで、その辺が限界だったんですね(今でもですが)。だから私にとっては「Gary=6連符」なんです。

それから程なくして「Corridors of Power」が出て一気にメタルブームに合わせて人気が出たのが17才頃。もうそりゃその前のJet時代のLPも輸入盤で買いました。当時は岡山に今は亡き「LPコーナー」という輸入盤を売っている店があったんで、そこで「Live at the Marquee」や「G-Force」を入手していた高校時代。その後のアルバムもことごとく買っていったのが大学時代です。

私と同じくらいの年代のHR/HM好きでギター好きな奴は、まず間違いなくGaryを通っていると思う。ある種パンクともいえるあの鬼神の如きギタープレイは、血の気の多いガキには間違いなく嵌ったはずです。当時は映像もなく写真でしか見ることが出来なかったのですが、あの「顔で弾く」ギターというのは憧れました。今でもその憧れは続いているかもしれない。顔がいい悪いじゃない、あれこそロックなギタリストの顔。彼が居なければ自分の「ハードロックギタリストの基準」は多少変わっていたかもしれない。自分のギタリストの基準というか形を教えてくれたギタリストの一人です。

で、「After the War」でCozy Powellとやったあと、「Still Got the Blues」というアルバムでブルース路線に転換します。まあこのアルバム、世で言われるほどブルースだとは思わないんですが、まあとにかくGaryがここからBBMを経てどんどんHR/HMからは離れていくんですね。途中に「Dark days in Paradise」という打ち込み系のアルバムも出したり。私はここからGaryをリアルタイムに追いかけなくなったと思います。やはり今でもそうなんですが、彼にはブルースは余り合っていないと思う。音的に言えば寧ろブルース回帰以降に音が変に太くなったところがあって、全然ブルースの音じゃなかったと思うし、ブルースのフォーマットで早弾きしたり。Snowy Whiteの「Highway to the Sun」に参加したときもそんな違和感を感じていました。

いや、わかるんですよ。彼はとにかく彼のブルースをやりたかったんだと思います。それはブルース界からの一部の批判があっても変わらなかったと思う。むしろそれでもかたくなに憧れたEric ClaptonやPeter Greenを目指したんだろうと思います。だからBBMもやったんだろうし、Albert Kingとも嬉々としてプレイした。

でも、

自分自身の物凄く勝手で本人を無視したことを言わせて貰えば、私の中のGaryは常に右手を目一杯動かし、左手を不器用にバタつかせながら、鳴っていない弦も強引に鳴らしてしまう、「クレイジームーア」と言われた頃の彼なんです。音がなくなりそうなところを左手のヴィブラートで鳴らしていってフィードバックを掛ける、ある意味鬱陶しいとも思われるギターであり、そのくせPhil Lyonttに影響されたであろう結構寂しげに哀愁を漂わせたヴォーカルだったりするんです。今の基準で言えば決して上手いギター捌きではないし、寧ろ「こんな弾き方はするな」と言われそうな弾き方なんですが、そこまで含めて好きでしたね。

Garyについてのコメントでよく覚えているのが、Greg Lakeが言った、「Garyって天才なんだ。彼はちょっと聴いただけの曲どころか、その場で初めて聞く曲だって合わせて弾いてしまう。あんなギタリストは見たことがない」というのと、Glenn Hughesが言った、「奴のHR好きは本当で、今はブルースだけどいつかはHRのフィールドに戻ると見てるんだ」という二つ。

実は私はGaryを生で見たことがない。去年のブルースライブの時も、「まあブルースはなあ…」ということでパスして、最近やっているHRフォーマットを見て、来日の話まで出てきて、「ほらみろよ、やっぱりGaryはこっちじゃなきゃ駄目だよね」と一人にんまりしていました。何がにんまりなんだ?何のことはない、最後の機会をなくしただけじゃないか…。これほど「行きたかった」という言葉が後悔を呼ぶ人は今まであまり居ない。もし彼のギター自体まで落ちていたら特に何も思わなかったんですが、音源聴いていたら何のことはないかつての「クレイジー」そのままじゃないか!確かに太ったけれど、そんな「死ぬ」とはどう見たって無縁なパフォーマンス。Ronnie James Dioの時は「まあ、闘病ご苦労様」という覚悟があったけど、今回は何か急に床が抜けた感じ。

この前楽器屋でスコアを見ていたら、高校生くらいかな、二人連れで何故かGary Mooreのスコアを見ながら、「これすげーよな」「コピーするか?」と言っていました。おじさんよっぽど「そうだよ、お前らいいとこ見てるじゃないか。そう、凄いんだぞGaryは」って言いたかったですね。歳月は超えて判る・感じるところはあるんだな、と。今は、「凄かったんだよ」という過去形で言わなきゃならないのが辛い。

私が好きな曲は、余り話題に上がらないんですが、この「One Day」という曲。言っていることは違うんですが、この抑えたギターと歌詞がたまらなく好きです。

今は何故か一番好きなアルバムである「Wild Frontier」の裏ジャケが思い出されます。ポツンと道に置かれた袋。

関係ない人には長くて鬱陶しい文章ですね。すみません。

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コメント

ほぼ同じようにGary Mooreに出会っているので今日のニュースは凄くショックです…。
丁度1984年の来日公演が終わった後で、最初に買ったLPが「Rockin' Every Night」。ぶっ飛びましてね、Jet盤が続々出てきたのをこんなに出るのか、と思って買いました。「Live!」(赤黄ジャケ)には「パリの散歩道」のスコアが入っててひたすらコピーしたり…。

58歳って…、師匠のピーター・グリーンですらまだ健在なのに…。

投稿: フレ | 2011年2月 7日 (月) 18時41分

フレさん、

そうだ、あのLPにはスコアがあったんですよ、思い出した。今から考えると何でTommy Aldridgeがドラムなんだ?とも思いますが、それでもあの「Dallas Warhead」にもぶっ飛んだなあ。

そうですよね、ピーターグリーンより先なんて信じられない。まだ全然昔と同じ現役ですよ。

投稿: ドイツ特派員 | 2011年2月 7日 (月) 18時55分

今朝、あんちゃんから聞いた時は信じられませんでした。嘘だろ?去年元気だったじゃん。この前YouTubeでみたハードロックセットのライブも元気だったじゃんって。ただ、Twitterの仲間達からゾクゾクと、寄せられる情報やBBCのニュースを見て事実なんだと、そうしたら、仕事もなにも手につきませんでした。
僕がゲイリーにのめり込んだのは、初来日のライブを大阪フェスティバルホールに友達と学校帰りに当日券で観に行った時からです。
あの時の衝撃というか、ライブってこんなに迫力があってスゴイんだと感じたんです。
それからは、LP買えるものは全部買ってずっと聴いてました。
当時はまだ、奈良の田舎の高校生でしたから、GーFORCEが欲しくて近所のレコード屋さんで、輸入盤のピクチャーレコードを見つけた時は本当に嬉しかったです。今でも僕の宝物です。
特派員さんと違って僕はゲイリーの来日公演は全部行ってるんです。それは自慢になるかな。
感激でした。


投稿: | 2011年2月 7日 (月) 19時14分

toshimitsuさん(だよね)、コメントありがとうです。

あれだけ色々来日行っていたのにGaryは行ってないんです。丁度大学受験の直前、そのあと大阪に行っているのに。そう、G-Forceはピクチャーアルバムがありました。

間違いなく全部来日に行っているのは宝でしょう。しかもとんでもない宝だと思います。

投稿: ドイツ特派員 | 2011年2月 7日 (月) 19時42分

わっ!ダメだ…。

「One Day」聴いてたら泣けて来た。

私は、ブルースから入って、その後他のアルバムも
入手したけど、やはり、ブルースが1番好きです。

なんで、ライヴに行かなかったのかなぁ…(;o;)

投稿: Tommy | 2011年2月 7日 (月) 19時42分

今日は10:30amから時間が止ったままでした。
まだ信じられません。

投稿: elmar35 | 2011年2月 7日 (月) 20時19分

Tommyさん、コメント有難う御座います。

ブルースアルバムが良い、という人もたくさんいらっしゃいます。そこは好みの問題でしょうね。

ほんと、ライブに何故行かなかったのか、さっきもかみさんと話していて、「え、あんたGary見てなかったの?あんだけ好きだったのに不思議ね」と言われました。やっぱり見れるものも見ておかないと駄目ですね。

投稿: ドイツ特派員 | 2011年2月 7日 (月) 20時48分

elmar35さん、

ほんと、私も信じられないです。大体ミュージシャンの死というのは何となく納得行くところがあるんですが、彼はそんなことが想像も出来なかったんです。Cozyが死んだときみたいです。

投稿: ドイツ特派員 | 2011年2月 7日 (月) 20時50分

僕もゲイリー大好きでした。たぶんドイツ特派員さんと僕は同じ年代ですね。

僕は82年の初来日、89年、そして昨年とライブ行きました。昨年のライヴは正直見るに堪えないものでしたが、でもそこにいるだけでよかった。だって、最後の来日から22年もたっているんですもん。

投稿: SOUND FINDER Shinkawa | 2011年2月 8日 (火) 09時24分

1986年、中3でギターを始めた頃、その存在は知っていたものの、通り過ぎてしまったことに激しく後悔...

投稿: sinpay69 | 2011年2月 8日 (火) 09時30分

 僕も昨日、会社でネットのニュースサイト見ていて、「あっ」って声出してしまいました。僕も特派員さんの見方に同意です。ブルースアルバム出した時、ライブビデオ買いましたけど、思いっきりスウィープピッキングやってましたもの。速い速い。まだまだギタリストとして先頭走ってるなあって思いましたよ。

 凄いファンというほどでもなくて、聴いてないアルバムいっぱいありますけど、僕はコラシアムⅡの時が割と好きです。あのジャリジャリっとしたロックっぽいフルピッキングの速弾きがカッコよかったなあ。ジャズ系の他のメンバーの音との混じり合いが絶妙にカッコよかったです。
 自分の音とフレーズを持ってたギタリストの一人ですよね。

投稿: しまうま | 2011年2月 8日 (火) 11時43分

SOUND FINDER Shirakawaさん、コメント有難う御座います。

そうですね、同世代でしょう。ライブって出来云々もあるんですが、その場で一緒の空気を吸っている、というのが重要だったりしますね。それが出来なかった、物凄く悔やまれます。

投稿: ドイツ特派員 | 2011年2月 9日 (水) 21時39分

sinpay69さん、

大丈夫です、作品は生きています。今からどんどん聴いてください。で、何故彼がこれほど同世代の心を揺さぶったか感じてもらえれば嬉しいですね。

投稿: ドイツ特派員 | 2011年2月 9日 (水) 21時40分

しまうまさん、

しまうまさんはコロシアムIIでしょうね、ギターアルバムとしてはあの辺りはかなり良いものですから。

自分の音、正にそこで、それが個人的にはブルースとは合ってなかったんじゃないか、という思いです。悪くはないんですけどね。どうしてもHRギタリストの思い入れが強すぎるのかも知れません。

投稿: ドイツ特派員 | 2011年2月 9日 (水) 21時42分

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