素材産業は目立たないけど悪くはないよ
最近、日本悲観論がとっても多くて、しかもそれは事実ではあるしまずいところも多いですねえ。例えば、色々なビジネスでの日本の地位低下が言われていて、自動車ではトヨタが頭打ちだとか、半導体はもう惨憺たる状況だとか、銀行も確かに国際社会では存在感がないとか。
ただ、それが全部か、と言われればそうでもない分野もあったりします。私は素材産業に長く居るので感じるんですが、実は色々な産業素材・部品というのは日本が圧倒的にシェアを持っていたりするものがあります。例えば、
・半導体用シリコンウエハー:信越半導体(約50%)
・セラミックコンデンサ:村田製作所、TDK、太陽誘電(65%程度)
・HDD用ガラス基板:Hoya(6-70%)
・自動車用ワイヤーハーネス:矢崎総業、住友(50%)
・ポリビニルアルコール:クラレ、日本合成(100%)
まあ思い立ったところをざっと書いたんですが、そのほかにも産業工作機械やら何やら結構なものが世界で大きなシェアを持っているんですね。
で、Twitterやら飲み会の会話やらで、「なんで素材は意外にシェアが保ててるのかな?」ということを考えてました。
一番大きなところって、素材の場合は「市場は作るんじゃなくて、出てきたところに合わせる」ということ。要は顧客から「こんなものが欲しい」というまでは何も判らないに等しい。で、ある人が言ったのが、
「そりゃ御用聞きマーケティングだからだよ」
という言葉。なるほどなあ、と思ったわけで、本当のド素材(石化のクラッカーやアルミなど)は価格勝負で品質差がないから駄目だけど、少し加工してお客さんに合わせていくというところは日本企業は得意かもしれないですね。しかもある意味市場を作っていくという、日本企業が結構苦手にしている仕組み作りが省けるわけで、ある意味お客さんの言いなりでいいもの作るというやり方でしょうか。
いや、何が言いたいかというと、今の就職や労働環境や経済やらの色んなことを、自動車やITや金融やマスコミといった目だったところで話しすぎてるんじゃないか?ということ。いや、こういう業界だっていつ中国やインドが逆転するかもしれない、というのはその通り。ただ、素材業界というのは非常に息の長い業界であることが多いので、もう少しこういうところがどういう仕事をしているのか、見ていったっていいんじゃないかな?
あと、やっぱりシェアが高い製品の営業や事業推進は圧倒的に楽ですね。それは市場の大小は問わずですが、世界シェアで上位のものも下位のものも新規のものもやりましたが、これは物凄く感じます。何をやるにも主導権が取れるというのはそれだけ自分も楽なんですね(ちなみに今担当している製品は世界シェア50%)。
特に学生の人は、例えば日経の株式欄でそういう素材がある部分を見て、ちょっと間口を広げてもいいんじゃないかと思うんですよね。例えばトヨタなんかは連結で31万人も従業員が居るわけで、それより少ない会社でやるというのもいいんじゃないかなと思うんですよ。なんていって、自分も就職したときは、「何をやるかわからない会社だなあ」と不安になっていたので余り言えないんですけどね。
これから日本企業が生きるのはこういう少し隙間なところかな、と思いながらまだ色々と考えています。あとは高いシェアだったのに逆転された素材・部品はどのくらいあるのか、調べて見たいですね。色々と判ることがあるかもしれないと考える雪の休みでございます。
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コメント
ドイツ特派員様
何か気の利いた事をコメントしようと考えていましたが、思い付かず。しかし、素材産業との括り方が、余りにも大風呂敷で、観念的には理解出来るのだが、具体的な話をしようとすると無理が出てくるのではないかと思った次第です。
「御用聞きマーケティング」は、必要条件でも十分条件でもないとおもいます。(そう言う事もあると思いますが)
就活の学生には、視野を広く持つために良いアドバイスではあると思います。一般的に何だか分からない商品の方が、ある程度経験を積めば、(その産業がなくならない限り)食いっぱぐれません。(特にアメリカは顕著)
又、川上(シェアとか、技術優位のある)に行く程、やりたい放題になるのも、良いですね。
投稿: ysjournal | 2011年2月12日 (土) 13時56分
ysjournalさん、
仰るとおり、広すぎますね。あと、「御用聞きマーケティング」の先に何があるのか、まだ理屈が頭にありません(ぼんやりとはあるんですが)。が、そこが出発点であるところは何か日本企業に合うものがあるんじゃないかな?と想像しています。
判りにくく理解の得にくい商品が結構面白し、確かに食いっぱぐれは少ないのは実感としてわかります。
投稿: ドイツ特派員 | 2011年2月12日 (土) 14時14分