« ベルギー人、初めて味噌カツを食す:「キッチンなごや」(名古屋・名古屋駅構内) | トップページ | 何故そんなに会社が個人に立ち入るのかな? »

2011年9月 4日 (日)

ちょっと突っ込み:レアアース問題(研磨剤CeO2)記事について

地震以降、報道が激減していますが、実はいくつか継続している問題はあるわけです。当然ながら地震で無くなるという性質ではないもの。その中で、レアメタル問題というものがありました。

で、日経新聞のサイトでこんなサイトが紹介されています。

さらば安直使用:研磨剤Ce編

これは題名も内容も誤解を受けるなあ。ここでは酸化セリウム(セリア)に絞って茶茶を入れていくことにします。

まず、最初の「レアメタル依存症の典型だ」という部分。「いつしか空気のような存在になっていた」訳がない。実はこの記事全体を覆う文脈とも絡むのですが、この研磨過程というのは常に液晶ガラス・ハードディスク・半導体メーカーの工程で槍玉に上がり続けていた部分なんです。それは、当の液晶ガラスメーカーがこんな証言をしています。

旭硝子台湾の記事

ここで少し書かれていますが、とにかく研磨工程というのはコストのかかる工程として常に削減の対象になっていたわけです。ですから、何もやっていなかったかのうようなこの書き方は非常に現実から乖離している。

更にもう一つ、別に液晶ガラス全部にセリアが使われるわけではありません。いや、寧ろ使うほうが少数派。上に張った旭硝子のリンク記事でも「フュージョン法にはない研磨工程」とあります。実は液晶ガラスにはフロート法とフュージョン法というのがあり、ここにある旭硝子以外の会社は全てフュージョン法で製造されています。で、その旭硝子のシェアは25%程度(経産省資料)です。ですから、世界としては別に凄く困る、ということは無いんです。HDDディスクについても同様で、大きく言えばアルミディスクとガラスディスクがあり、ガラスディスクに使われる場合がある、ということです。「場合がある」というのは、他の研磨剤、例えば酸化シリコン(シリカ)での研磨というのも実際に行なわれているわけで、いかにも「HDDディスクが製造できない、大変だ」というのは全く事実とは違う、ということです。

ちなみにもう一つ、いかにも「簡単にセリアを導入した」という文脈で書かれていますが、これこそとんでもない誤解。以下のページでも書かれていますが、研磨には「機械的研磨」と「化学的研磨」というのがあります。この記事では判りにくいのですが、言ってしまえば壁の落書きをヤスリでこすって落とすのが「機械的研磨」、シンナーで溶かして落とすのが「化学的研磨」と思ってもらえばいいと思います。で、化学的研磨は非常に制御が難しい。更にセリアというのは一般的な研磨剤として使われていたシリカや酸化アルミニウム(アルミナ)よりも扱いにくいんです。比重が高いので沈降しやすいし凝集しやすい。で、そういった性質の製品を工夫しながら何とか導入にこぎつけたのが実態です(ここにチラッと書いてある)。しかもシリカやアルミナよりも単価は高いんです。いかにも「安いから使った」という風にも読める書き方ですが、全くそれも違っていて、だからこそこの記事にあるような研磨工程のコスト削減に取り組む研究がこのレアメタル問題以前からずっと継続されていたわけです。

何でこんなことにこだわるかというと、まあ自分が以前多少なりとも関わっていた仕事だというのもありますが、やはり導入・使用の経緯を正しく理解しないと対策を間違えると思うから。原発もそうですけど、それが導入されるにはそれ相応の合理的な理由があるはずなんです。それをちゃんと伝えるべき媒体がちゃんと伝えないというのは、こういう小さな記事でも出ているのかな?と思うんですね。よく共産党が「色々な税制を調べると日本は高くない。なのに海外に出る日本企業はけしからん」って言うじゃないですか。んなわけなくて、彼らの調べ方が都合よいだけ。もし本当に日本が得なら日本に残りますよ。

もう一つ、ある素材がなくなったからといってその素材を使う製品が無くなる、というのはありえないと思う。これは非常に何となくな感覚ではあるんですが、それが良いか悪いかは別に置いて、極端に言えば木がなくなったってギターはなくならないだろうし、鉄がなくなったって車はなくならないんじゃないか、と思う。逆によほどの理由が無い限り、あるものをなくしてしまうほどの素材の枯渇は起こさないようにするんじゃないかと思う。このセリアでも、アメリカのマウンテンパスのモリコープが再開を決めましたが、要はそういうこと(ま、このモリコープを採掘していなかったのにもそれ相応の合理的理由がある。インドもしかり)。

誰かが言っていましたが、「将来の問題について、『~問題』と名が付いたとたんに、それは殆ど実際に問題を起こさず終わるものだ」と。2000年問題、ホテル2007年問題、団塊大量退職問題、などなどなど。代替材料、供給も含め、何とかなるはずです。だって、セリアがこうなったからってテレビが買えなくなってます?

出てきている論調って、相当気をつけて読まないといけないんだなあ、と思います。


(追記)
どうもレアアース関連の値崩れが一部で始まっているようです。株の世界ではありませんが、「まだはもうなり、もうはまだなり」で、やはり市況商品である、ということだと思います。

|

« ベルギー人、初めて味噌カツを食す:「キッチンなごや」(名古屋・名古屋駅構内) | トップページ | 何故そんなに会社が個人に立ち入るのかな? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104193/52639547

この記事へのトラックバック一覧です: ちょっと突っ込み:レアアース問題(研磨剤CeO2)記事について:

« ベルギー人、初めて味噌カツを食す:「キッチンなごや」(名古屋・名古屋駅構内) | トップページ | 何故そんなに会社が個人に立ち入るのかな? »