衰え知らず:「Jet Resurrection」(横関敦)
私が日本で最も好きなギタリストの一人である横関敦。何しろニックネームが
Jet Finger
というくらいですからそりゃ超早弾きがトレードマークで、自分自身もそれを認めています。で、前回の「G.T.Resonator」からもう8年、旧譜の再発とかを挟んでやっと出ました新譜がこれ。
しかし「Jet Finger」、すげーカッコいい響きだな。
今回もソロアルバムらしさということで、彼のGと一部のB以外は全て打ち込み系で纏めたとのこと。本人が何しろタイトルに「Jet」と入れているだけあってすげー弾きまくりですな。M1「The Flame」の極悪低音リフからこれまた反則ヴィブラートのメインメロ~落下するような半音階と横関ワールド全開。
これだよ、これを待ってたんだよね。
もう「枯れ」とかとは無縁の早弾き捲くり。でも、彼の場合そこに激甘なメロディーセンスや泣きまくりヴィブラートという感情が出てくるものが凄いんですよね。この辺は山本恭司の影響を感じます。M2「Crimson World」はコードの少ない曲ですが、横関のエモーショナルなギターが出るとそれだけで色彩が出ます。ソロはジョージリンチ彷彿なんですが、横関の方が更に凄みがあると思っています。で、M3「Dark City」で出るサビの甘メロでもう悶絶。どうしてそう弾ける?そこからのポップなコードになだれ込む超絶ソロ。M4「Psycho Doctor」は一転してインダストリアルな匂いのするリズム。しかしそこにしっかりメロディー感のあるメインを乗せてくるので対比が美しい。ちょっと懐かしいソロフレーズも出てきます。M5「A Light From Heaven」は、少し不思議なリズムに間を入れたメロディーがユニーク。M6「Bound for Love」はバラードと言って良いでしょうね。しかしこの人の高音でのロングトーンは本当に気持ち良い。このメロディーはアルバムで一番好きかも。珍しいシャッフル系のM7「Boggie Man」はクリーントーンのカッティングとメロディーを混ぜたような部分からの展開が新鮮。で、M8は曲名から「The Fastest」。少しスラッシュを感じるイントロリフから、そのまま激烈ヴィブラート+アルペジオ+超速オブリのメインへ。ソロは凄いんだけど一瞬出るチョーキングの音程オーバーなところがたまらなくカッコいい。
誤解がある向きもありますが、彼はいわゆるイングヴェイフォロワーとは全然違います。いや、彼のようにも軽く弾けるし、イングヴェイは好きだと公言していますが、もっと音楽的な幅が広いところにある。しかもソロはもっと肉声のようなソロなんですよね。譜割りも多少きっちりしないところがあって、そこに大きなヴィブラートやスライドが入ってきて、しかもそれがスリリング且つカッコいい。「聴いてみて!」としか言えないんですが、物凄いギターだと思う。で、そこにポップセンスが入るんだからそりゃ凄いわな。彼自身言ってますが、「ロックを感じるハイテクギタリスト」なんですよ。ちなみに彼の一つの特徴はスライド。早くて異常に正確。
ということで衰えだの枯れだのとは全く無縁のJet Finger、本人も全くその辺を気にしておらず寧ろ、「ピアノの三柴君(Eddie三柴)曰く、ピアノは60からでも上手くなるらしい。練習してない奴が弾けなくなるだけだから」ということで更に尖がってくれるだろうと期待してますね。
某ギター雑誌にあったDVD動画を貼り付けますが、しかしすげーなあ。あのスライディングヴィブラートは何だ?10フレットくらいスライドさせてるんじゃない?
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コメント
ドイツ特派員さん、
速弾きで、Al DiMeola を唐突に思い出しました。
”Elegant Gypsy” の中のこれが好きでした。(エレキも良いけど)(久々に聞いて、CD買いそうです)
http://www.youtube.com/watch?v=omJzvdM32sY&feature=related
途中の掛け声が、なぜか印象に残っております。
投稿: ysjournal | 2011年11月 7日 (月) 01時56分
ysさん、
Al DiMeola、懐かしいですね。25年前の定期演奏会で私の同級生がこれをやっていました。原曲はPaco De Luciaとの演奏で、このあとここにJohn McLaughlinとのスーパーギタートリオになる重要な曲です。
コピーしてみるか(無理無理w)。
投稿: ドイツ特派員 | 2011年11月 7日 (月) 20時17分
ドイツ特派員 さん
渋谷公会堂のコンサートを観に行き、左手の指に骨がないかの様に動いてたのを覚えてます。
力まず速いでビックリでした。
私も、無謀にもコピーを試みた事がありましたが、32分音符の連発で、簡単なフレーズを少し覚えて断念しました。
投稿: ysjournal | 2011年11月 7日 (月) 20時47分
動画見てもまるでイングヴェイっぽくないですね(笑)
イングヴェイよりも力強いピッキングだし、北欧というよりアメリカっぽいな、と思います。
横関敦のソロCDは未聴で、筋少・真行寺恵里・松田樹利亜のCDを持ってるだけなんですが、彼のギターを聴いてると、時々ありえないところに音がすっ飛んでいくように聞こえる事があります(分かりにくいかな)。
この正確無比なスライドと速いチョーキングのせいだったと納得しました。
この動画も感情の迸るままに弾きまくり、今にも「辛抱堪らん!」って椅子から立ち上がりそうですね(笑)
投稿: キャプテン髭 | 2011年11月 7日 (月) 22時28分
ysさん、
私も昔、「スペイン高速悪魔との死闘」をコピーしようとして、メインのメロディーしか弾けませんでした。まああれである程度ピッキングを見直すことが出来たのですが。
私がギターを習っていたときも、「とにかく脱力」と散々言われました。それが難しいんですけどね。
投稿: ドイツ特派員 | 2011年11月 7日 (月) 22時34分
キャプテン髭さん、
仰ることわかります。スライドはかなり凄くて、私なんて「これはワーミーバーだ」と思っていたのが楽々スライドでやっていた、というのがありました。一番はジョージリンチかな?と思いますね。
ほんと、とんでもないギタリストだと思います。
投稿: ドイツ特派員 | 2011年11月 7日 (月) 22時36分
いやあ高速記事更新サスガです。
こちらは目下聴き込み中です(笑)
しかし、打ち込みの部分はさておき、ここまでかっのギターアルバムで嬉しい限り。
ただ、メロは聴いたことあるような、ってのも多いですが(笑)
ジェットの肝は実はピッキング、チョーキング、ヴィブラート、スライドなんですよね。
今回はアーミングも激しいですが。
こっちも折を見て布教活動のための記事更新予定です(笑)
投稿: sorapapa | 2011年11月10日 (木) 23時22分
Sorapapaさん、
まあ打ち込みは色々といいたいことはあります(苦笑)。正直「Brilliant Pictures」の頃の方がよかったかも。メロは使いまわしではなく自分の過去へのオマージュと思いたいです。
記事更新、待っとります!
投稿: ドイツ特派員 | 2011年11月14日 (月) 06時38分