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2015年3月29日 (日)

改めて「Midnight Circus」を聴き直す

LIGHT BRINGERが活動休止してからはや3ヶ月。「もう」なのか「まだ」なのか、少しずつかつてのメンバーの活動が聞こえて来ています。そうやってどんどんフィールドを広げて欲しいな、と心から思いますね。

ただ、彼らが動くと同時に、私として非常に不満なのは、その彼らがLIGHT BRINGERというバンドの水準を上げた「Midnight Circus」がいまだに入手困難なこと。彼ら、特にFukiやHibikiやKazuという人たちが為しえた凄いアルバムであるのに、です。
更に、私がLIGHT BRINGERの最高作と信じて止まないこのアルバム、当時は浮かれた気持ちでレビューしているという気もします。個人的にここで再度今の冷静な視点で今の自分の思いを書くのは意味はあるだろう、ということで。当時から言い続けていることの繰り返しも含めて、書いてみたいと思います。レビューではなく、あくまでこの今現在に感じた思いをつづりたいな、と。
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私にとってのLIGHT BRINGERは全てこのアルバムから始まっています。

まず、このアルバムは私にとっては「ゆるやかなコンセプトアルバム」です。ジャケットから裏ジャケへの流れ、それに呼応するアルバムの流れ。その意味では最後二曲は確かにボーナストラックなんですよ。全体を流れる「ゆめうつつ」というコンセプト、その迷い込んだ場所から最後出て行き、そこには誰も居なくなる、という流れを考えるとね。ただ、ガチガチにコンセプチュアルなアルバムではない、そこがまたこのアルバムを聴きやすくしているのだろう、と思います。それはFukiが書く歌詞の判り易さがありながら余りに特異な言葉選びのセンスによるものが本当に大きいです。実はこの「ゆめうつつ」っていうのを私が考えたのは、このアルバムの詩世界が、岡嶋二人~井上夢人の小説を読んだ時の感覚に似てたんですね。特に「クラインの壷」とかの空気なんですが、「今ここに居る自分は現実なのだろうか?」という部分が凄く似てると感じたんです。

ちなみに、このジャケット、本当に私は好きなんです。このバンドの性格を表わしているなあ、と思いますし、なんとも言えず美しいと感じています。

このアルバムはKazuの色が強いアルバム、と語られることがあるのですが、実は彼の単独作曲は三曲のみ。しかも一曲は以前からある「Hearn's Heaven」ですから、純粋には二曲しかないんですね。それでもそういう評価があるのは、ひとえに彼の残したその二曲が強烈であることと、彼のギタープレイが同じフィールドのギタリストとは違う極めてロック色の強いものであること、更に彼のボーカルがアクセントになっていることによるでしょう。で、改めて聴いてみると、実はこのアルバムが新しいLIGHT BRINGERとしてのものになっているのは、Hibikiのもたらした「メタルの陰影」であることに気付きました。それは同じようにポップなHibiki&Kazu作のM4「奇跡」と、同じ方向にあるKazu単独作のM6「今にも落ちてきそうな空の下で」の違いであろうと感じます。実際には(共作になっているM4だけではなく)、この二人のコンポーザーがお互いに影響されたことで楽曲の個性と質が上がった、というのがあるのだろうと考えています。

また、「重さ」というファクターも今までになかったものです。静かな序曲であるM1「開幕」からそれまでのLIGHT BRINGERと全く違うM2「Resistance」、その「重さ」が「メタル」の色を強くしています。Fukiの歌い方も、全く変わった勇壮なものですし、バックも完全なメタルバンドの演奏です。それは再録であるM3「Le Cirque de Minuit~真夜中のサーカス~」でも同様。実は私が良く使う「ポップさ」の方が隠し味で、主題は「メタリック」「重さ」という爆発力の方では、と最近は思い直しています。

演奏面ではそれまでと大きく変わったところはないんじゃないかな。唯一、重さの要であるドラムサウンドが以前よりラウドになったと思います。ただ、これもトリガーで録り直しているらしく、少し硬いというか、マシン臭さはありますが、それはそれでこのサウンドにはアリだと思っていますね。M5「IT'S SHOWDOWN」はそれまでの演奏陣の集大成でしょう、Mao、Seiya、Satoru、Hibikiと暴れ放題です。さすがにM8「Lazy Maze」は、インディーズ初期のオリジナルから言えば別物という仕上がりになってますけどね。で、ギターの二人、本当に対照的というか、Seiyaの極めて正確な部分、Kazuの極めてロックな部分、こういうバンドではギタリストの個性が出にくいのですが、その点もちゃんと出している。Hibikiの無双振りは言うに及ばず、Maoの変幻自在さもこのアルバムの色をより鮮明にしています。


という事を言いながらも、とにかく一番変わったのはFukiの歌。それまでのある種不安定さが可愛さに繋がっているような歌い方から、もう別人のような歌の凄さ。これから後も進化はするのですが、このアルバムでの変化っぷりというのはもう有り得ないレベルです。で、シャウトが余りに凄絶なM7「Dream!」があるからでもあるのですが、実は彼女の高音から少し下の音域の厚みが凄くあるんですね、ドスが効いているというか。その上で、無茶苦茶高い所の高音域が、それまでの「とにかく音が出てる」という状態から「音を出している」という形に進化したんですから、それは凄いことになるのは当たり前です。とにかく全編でその歌が炸裂しているわけですが、それが本編最後のM7「Dream!」で昇華されているわけです。実は歌詞を読むと、意外と意味の流れはなかったりするのですが、とにかくその選んでいる前向きな言葉と歌、そして曲が持つメタリックさと判り易さと郷愁で、私が何時も「日本が生んだメタルの理想系」というものになっているんではないか、と思っています。


この歌詞世界、今聴き直しても唯一無二だと思います。この歌詞がなければLIGHT BRINGERがLIGHT BRINGERにならないというか、この点も大きな変化点のアルバムじゃないかなあ、と。これも憶測ですが、Fukiは「物語を書く」よりも「歌い易い単語」から作ってるんじゃないかな、と。いや、物語はあるんでしょうが、それをつらつら書くのが先には立っていない気がするんです。印象的な単語をまず並べてる、という想像。それにしてもこの歌詞、恐るべしです。


正直に言うと、大して新しい発見があった訳じゃないです。ただ、このアルバムは自分の心に、耳に何時も納めておきたい、だから、語り続けないとやってられないところがあるんです。このアルバムがなければ、その後の「genesis」「Scenes of Infinity」「monument」は生まれていなかったと思います。それは、楽曲面でもそうですし、メジャーディールが取れたという環境面でもそう。当然というか、私にはどのアルバムも、多少の好みの違いはあれど、全てが愛おしいんですが、特に思い入れというか、このLIGHT BRINGERという泥沼に踏み込ませ夢中にさせた、という意味で、この「Midnight Circus」は別格なんです。


私のこんな駄文はどうでもいいんです、とにかく一人でもこのアルバムを聴いて欲しい、ただただそれだけなんです。何故「Dream!」があれほど待望されるのか、このバンドの変化点は何だったのか、曲順というのがいかに重要なのか。いろんなことを見せてくれるアルバムだと思います。


早く再発して欲しい、最後はただそれだけなんです。

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