小川銀次さんのこと
元々彼がある程度の知名度を得たのはRCサクセションへの参加でしょう。ただ、私はRC作セションを全然知らないんですね。私にとってはやはり彼のリーダーバンドであったCrosswindの「そして夢の国へ」なんですよ。
この中のバラード「みのむし」と最後の大作「そして夢の国へ」。この二曲だけでもアルバム買う価値がありますね。特に「そして夢の国へ」、そうる透のドラムも炸裂、実は中盤は銀次さんアドリブ弾きまくってるだけなんですが、そのスリリングでカッコいいこと。その後、当然の如くソロも買いまくり、Inner Windシリーズはもちろん、2000年頃にでた12枚組みの「大吟醸」も、清水の舞台から飛び降りる気で買いましたよ。
とにかく彼の「音」、これがどうやっても判ってしまうという個性。昔Gaoというソロシンガーのバックで5曲ほど弾いてましたが、クレジット見なくても判りますからね。で、かなりトランジスタアンプに拘っていて、ヤマハのFシリーズを長らく使ってたはずです。トランジスタとしてあの音は有り得ん。正直、「良い音」とか「綺麗な音」とか、そういう一般的な括りの音じゃないんですよね。何というか「ぶおー」って迫ってくる感じ。多分ギターのトーンを絞ってトレブルをアンプ側で調整してるとは思うんですが。
プレイも一般的な評価がどうこうという枠には嵌らないですね。とにかく隙があれば音を詰め込んでいるという。好き嫌いはぱっくり分かれると思うし、「何だよ、手癖でやってるだけじゃないか?」という評価もある。でもねえ、この洪水のようなギタープレイが感情の赴くままっていう風に思えるんですよ、私には。正直音が出切っているのかどうかも怪しいところはあるし、チューニングがずれているように思えることもある。それであっても、こんなに剥き出しに弾いてくるギタリストが大好きで。「いいよ、嫌いなら聴かなくていいから」っていう割り切りというか、それが気持ちいいんですよね。
だから曲も、銀次さん弾きまくる前提で作ってるんじゃないかな?昔の「Private Pieces」とか「Inner Wind」聴いてると、とにかくリズム隊のミックス音が小さくて、ギターばかり目立つ(苦笑)。でも、そこで紡がれるテーマメロディーや、アコースティックの小品などを聴くと、凄く繊細で詩的な感覚が読み取れます。「雨のやむ時」という曲があるんですが、つたない感じなのに何故か聴いてしまう。
実はこういいながら彼のギタープレイを生で見たのは二回しかありません。一度は確か92年頃の今は無き六本木PIT INNで。確かにその時はヤマハのFシリーズから、まあ色んな音が出ること出ること。何をやったかもさっぱり覚えていないんですが、スリーピースで自分がバンドをやる基準のひとつになったのは確かです。もう一回は音楽学校のイベント、確か2000年だったかな?一曲だけ出てきたんですよね。ドラムが手数王菅沼孝三(これは怪しい)、ベースが櫻井哲夫、もう一人のギターが西山毅という布陣で、Joe Satrianiとか弾いてる所に彼がゲストで。もう最初から最後まで弾きまくって弾きまくって「じゃあね」って感じで。今から考えると物凄く貴重なライブだったかも知れません。
彼自身がギターを追求していたからでしょうか、一般的な評価で彼が出てくることは決して多くなかったと思います。そんなことは関係なく、私にはワンアンドオンリーなギタリスト・音楽家でした。彼がその活動に満足していたかどうかはうかがい知ることは出来ませんが、少なくとも音源として残されているもので、私のその評価は揺るがない。正直、「あの人がこの評価なら」という比較は可能でしょうし、彼も同世代の有名ギタリストに対してそういう発言をしていたという記憶があります。この辺は時代とか運とかありますし、もしかしたらその中でもこれだけの音源を残せたのは幸運な方、という見方も出来ます。でも、もう少し長く音楽を作って欲しかったなあ、と感じますね。
今から思えば晩年となるライブ、ですが、何処が晩年なんだか。やりたい放題、最高なんですよ。
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