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2015年12月 9日 (水)

これは正しいオマージュである:「Dream Chaser」(Blaze)

BostonにしてもJeff Beckにしても、寡作なミュージシャンとして知られていますが、今回紹介するBlaze、

40年でアルバム2枚

です。はい、読売ジャイアンツが最下位に沈み、まだモントリオールオリンピックが開かれる前年、新幹線が博多までまだ延びていない時代から活動、で、

アルバム2枚

です。
が、この完成度たるや、絶句するほど素晴らしいです!

ある時期から私がCD評を書く時、比較に他のバンドを出すことを止めました。何となくバンドに失礼か、というのと、何とかそれをなくして伝えたいという両方の意味なんですが、今回はちょっと違います。これはオマージュであり、それを使いつつBlazeらしさを出すというもの、逆に思った影響を出すのは当然だろうと。

まず、音楽全体としては、「三頭政治Rainbowのボーカルをデヴィットカヴァーディールに変えた」というものだと思います。ミュージシャンとしての実力は超一級ですが、それぞれのパートで「ああ、あの音だよねえ。。。」というのが出てくるのが微笑ましい。Rainbow全盛を知っている我々世代が頭に浮かぶ「様式美HR」そのままです。

ただ、彼らが凄いのはその中でもちゃんと「彼らの音」を出している事。この辺の表現は難しいんですが、例えば池田Shigeのギターにしても、リッチーブラックモアから、例えば展開したイングヴェイとは違う方向の変化はちゃんとあるんですよね。音楽そのものもそうで、特にキーボードの増田Nobuの活躍が相当大きい。


ということで、M1「Dream Chaser」のイントロのドラムからもうニヤニヤ。歌詞に「All night long」とか入れてるのも確信犯でしょう。キーボードはどちらかというとDeep Purple的ですが、ギターソロの入りなんてもろリッチーのタイミングと音、更に上手いんですけどね。

M2「Angel's Eye」、タイトルからして分かる人には分かる、恐らくDeep Purpleの「Demon's Eye」へのアンサーソングでしょう、三連のリズムからもろ分かり(笑)。もっと分かりやすくて開放的な曲ですが、この辺の取り入れ方、見事としか言いようが無い。

M3「Maria」は何と言うか「LA Connection」というか、ちょっと地味なんだけど味わい深い曲。この曲は裏でなるシンバルとカウンターのオルガンが肝だなあ、掛け合いのギターははもう笑うくらいリッチーですが、もっと音が太いんだよなあ。

M4「Moon Rider」、ノリのいいロックンロールという感じですが、途中のサビから4度進行のメロが美しいなあ。凡百のロックンロール系とは違う優雅さというか。

M5「Mother」は哀しい歌詞に美しいKeyが包む音像が素晴らしい前半のハイライトと言っていいバラード。いまどきこんなストレートなバラードも少ないかも知れない、でも生沢Ikeの歌のエモーショナルなこと。余りに美しい。。。

M6「The Half of Mine」はもう「Tarot Woman」ですな。ただ、これが日本人だからどうか、やはり展開がストレートにならず、ポップとも言えるメロディーが続くんですよね。で、このギターソロがもう貴方リッチーのラン奏法のそのままというか、嬉しくなるんですが、その後のスイープはリッチーの数倍早くて上手いw。いやあ楽しくて仕方ないわ。

M7「Rodeo Girl」の軽いインストを挟んでM8「I Can't Stop Loving You」、さっきのM4に近い軽快なナンバー、「Power」とかが連想されます。それにしてもみんな上手いなあ、と再確認。このギターのスライドもある意味ちゃんとした奴じゃなくて、リッチーが良くやるある種いい加減な奴を踏襲してます。何というか、ちゃんといい加減にやるというか。

そして本編最大の大作、M9「Break It Down」、ここまでやったらすげーな、のあからさまな「A Light in the Black」、なんだけど何故かこうなると「BlazeのHR」になる不思議。ドラムのスネアやギターソロなんてどう聴いてもあの曲なんだけどなあ、それにしてもこのカッコよさ、何なんだ?


本編最後、M10「Miss YOU」は、「Maybe Next Time」を拡大解釈したようなバラードのインスト、Shigeのギターの少し細くて儚い音、更にエモーショナルなフレーズ、本編最後を飾るに相応しい曲だと思います。

で、あとはボートラ扱いで「軽いだろうな」と思うでしょ?ところが、ここからがまた凄いんですよ。まずはM11「Born to Be Lonely」とM12「Sarah」は以前Kaen名義でリリースされたシングルですが、M11はハードポップ的な要素もある哀愁HRナンバー、途中のSamのバスドラパターンにしびれると何処からともなく「Lost in Hollywood」が。M12はこのアルバムで一番のスピードナンバー、その癖結構重たいリズムでたまらん、あと、カウベルがかなり効いてるなあ。Ikeのボーカルも力があって素晴らしいあと、お約束の分散和音でのギターとキーボードのハモリ。これぞ正しい姿ってもんでしょう。


ただ、


私が一番押すのは最後の最後M13「Hero~Justice of my Love」。この曲が一番Rainbowなどから遠い曲かも知れないです。が、何なんだこの曲の名曲っぷり。サビの「This is the Justice of my Love~」からのフレーズ、大したフレーズじゃないはずなのにカッコよすぎでしょう。更に、ギターソロとエンディングに向かったところのバスドラのパターンが感涙もののかっこよさ。正直に言って、この曲でガッツポーズ出ないのであれば、多分様式美HRは向かないと思う(笑)。


見も蓋もない言い方をすれば、音楽要素としての新しさはないです。が、そのフォーマットの中で一番良いモノを出したのがこの作品だと思います。贔屓目たっぷりですが、このアルバムを聴いて「マネだ」というのは正直無粋ではないかな、と。回顧だろうが古かろうが、これは最高の「日本の様式美」の一つだと思います。

是非聴いて欲しいですね。

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コメント

このCD値段が高いですよね。
なんで3500円もするのかしら。
意地でもその値では買ってやらねぇ、と思って中古で3000円で買ってやりましたよ 笑
それでも中古としてはたけぇけどな 笑

投稿: 鼻毛魔人 | 2016年1月 6日 (水) 12時26分

鼻毛魔人様、コメント有難うございます!

あ、言われて見れば確かに高いかも。もしかするとネット配信中心に考えているのかも知れないですねえ。

投稿: ドイツ特派員 | 2016年1月11日 (月) 21時18分

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